コロナ禍を乗り越え、訪日外国人(インバウンド)の数は再び増加傾向にあります。観光庁の発表によれば、2024年には月間300万人を超える訪日客が戻りつつあり、都市部だけでなく地方の観光地や商業施設にもその影響が広がっています。そんな中、インバウンド需要を取り込むために「キャッシュレス決済」と「免税対応」は、今や欠かせない店舗運営の要素となっています。本記事では、キャッシュレス対応と免税対応がもたらす利便性向上のメリットを中心に、導入時のポイントや、実際に導入して成功している事例などを交えてご紹介します。キャッシュレス決済がスタンダードな時代へ■ 世界の“当たり前”になったキャッシュレス文化世界的には日本以上にキャッシュレス化が進んでおり、中国では「WeChat Pay」や「Alipay」が圧倒的な普及率を誇り、アメリカや欧州でもクレジットカードやスマホ決済が主流です。訪日外国人にとって、現金しか使えない店舗は「時代遅れ」「不便」という印象すら持たれかねません。特に日本円への両替が面倒で手数料も高いとなれば、「買いたいけど買えない」というストレスを与えることにもつながります。■ キャッシュレス導入による店舗側のメリットキャッシュレス対応は、顧客側の利便性向上だけでなく、店舗経営にも多くのメリットがあります。会計処理がスピーディーになり回転率が上がる現金管理の手間や防犯リスクが減少するスタッフの教育負担が軽減されるPOSデータと連携すれば売上分析も容易また、最近では導入コストが抑えられるサービスも増えており、初期投資が少なく始められるのもポイントです。免税対応で“買いやすさ”を最大化する■ 免税制度を理解しよう訪日外国人向けの消費税免除制度は、旅行者が一度に5,000円以上の買い物をする際に、税抜価格で購入できる制度です。これにより購入意欲を後押しする効果が非常に高いとされています。対応している店舗は、「TAX FREE」のロゴを掲げているだけで集客力が向上するケースも多く見られます。■ 免税非対応の店舗は機会損失に…たとえば外国人旅行者が1万円の商品を購入しようとしたとき、他に同じ商品が免税で買える店があれば、そちらに流れてしまうのは当然の心理。つまり、免税に対応していないというだけで*“選ばれない店舗”になってしまう*のです。しかも現代はSNSで情報が一瞬で広がる時代。外国人同士が「どこの店がTAX FREE対応しているか」をリアルタイムで共有しています。■ 免税対応のために必要な準備とは?免税制度を利用するためには、事前の申請と設備(レジ連携、書類作成システムなど)の導入が必要ですが、近年ではクラウド型の簡易システムも普及し、スムーズに始められるようになっています。店舗の規模にかかわらず、個人事業の飲食店や小売店でも導入可能です。キャッシュレス&免税対応の相乗効果とは?キャッシュレス決済と免税対応、この2つをセットで導入することで、訪日客にとって極めて“ストレスの少ない買い物体験”を提供することができます。■ 利用者目線で見ると…「スマホで決済できて簡単」「買った分、税金が戻ってくるのでお得」「外国語対応の案内があって分かりやすい」これらの体験は、そのまま好意的な口コミやSNS投稿につながり、他の観光客を呼び込む強力なマーケティング効果も持っています。実際に成功している店舗事例■ 表参道のセレクトショップ海外観光客を意識したセレクトショップでは、以下の施策を導入。クレジットカード・QR決済(WeChatPay、Alipay、PayPay)対応免税システム完備+多言語対応スタッフ常駐商品タグに多言語表記+写真付き免税案内結果として、コロナ明け以降の売上は前年比150%以上に。SNSでの投稿を見た観光客が次々と訪れる“人気観光スポット化”しています。導入時の注意点とアドバイス導入にあたっては、以下の点に注意しましょう。ターゲット顧客の国籍に合った決済手段を選ぶ 例:中国人客が多ければ「Alipay」「WeChat Pay」 欧米系には「Visa」「MasterCard」「Apple Pay」など免税制度のルール改定に常に注意する 制度は年々見直されるため、最新情報の把握が重要ですスタッフ教育と多言語対応マニュアルの整備 外国語が話せなくても、英語や中国語の案内パネルで十分に対応可能ですまとめ:未来の店舗に求められる“快適な購買体験”とはキャッシュレス決済と免税対応は、単なる「便利さ」や「コスト削減」だけでなく、“選ばれる店舗”になるための基本装備となりつつあります。訪日外国人にとっての買い物は、「モノを買うこと」以上に「日本の文化やサービスに触れること」。その中で、スムーズで安心できる支払いと、合理的で魅力的な価格設定(免税)は、大きな価値となります。「キャッシュレス&免税対応」は、店舗の信頼感と顧客満足度を飛躍的に高め、インバウンド市場で成功するための必須条件と言えるでしょう。