コロナ禍を経て再び活気を取り戻しつつある訪日外国人市場。東京や京都、大阪などの観光都市では、インバウンド需要を取り込むべく「日本らしさ」を打ち出した店舗が続々と登場しています。中でも注目されているのが、*伝統的な和の要素にモダンなデザインやエンタメ性を掛け合わせた「和モダン×体験型店舗」*です。単なる買い物や食事ではなく、“五感”で楽しめる「特別な体験」が今、求められています。この記事では、そんな「日本らしい体験」を提供する店舗づくりのポイントと、具体的な事例・アイデアをご紹介します。なぜ今「日本らしさ」が求められるのか?訪日外国人が日本に期待しているものは、単なる観光地巡りやグルメだけではありません。旅行サイトやSNSには、次のようなキーワードが多く並びます。“本物の日本文化に触れたい”“日本人の生活を体験したい”“映えるだけじゃなく、ストーリーがある場所に行きたい”つまり、「ただ見て終わる観光」から「感じ、体験し、心に残る観光」へニーズが変化しているのです。その中で求められるのが、“リアルな日本文化”に触れられる体験型の店舗。見た目のデザイン性だけでなく、そこで何を体験できるかが勝負の分かれ目となっています。和モダン×エンタメ店舗の特徴とは?従来の「和風店舗」は、古民家をそのまま利用したり、畳や障子など日本的な建材を用いた内装が主流でした。しかし、現代のインバウンド客にはそれだけでは物足りません。近年人気を集めているのが、和のテイストにモダンなエッセンスやエンタメ性を加えた新しいスタイルです。特徴1:和とモダンの融合木材・漆喰・竹など伝統素材を活かしつつ、照明や什器は現代的に洗練畳のスペースにネオンやアートを組み合わせる着物とスニーカーのような“ギャップ演出”が映える特徴2:参加型の体験を提供盆栽や書道、茶道などを実際に体験できる日本酒の利き酒、寿司の握り体験などアニメ・忍者・侍など“ジャパンカルチャー”を取り入れた演出特徴3:ストーリー性のある空間づくり町家や蔵を改装し、「タイムスリップしたような物語性」スタッフが着物や作務衣で接客し、雰囲気を統一商品やメニューに“由来”や“文化背景”を伝える仕掛け実際にウケている業態・アイデア例ここでは、実際に人気を集めている「日本らしい体験型店舗」の事例をいくつか紹介します。■ 寿司体験カウンター「握り寿司を自分で握る」訪日客の関心が高い寿司文化。職人が握る様子を見るだけでなく、自ら軍艦や巻き寿司を握れる体験を提供する店が好評です。完成した寿司をその場で味わえる上、職人から寿司の豆知識も学べます。✨ポイント:食品衛生や設備にも配慮し、簡易的でも本格志向を演出すること。■ 和風忍者カフェ・バー日本文化の象徴でもある“忍者”をテーマにしたカフェ。内装は竹や屏風で演出し、スタッフは忍者衣装。手裏剣投げ体験や、忍術をモチーフにしたドリンクメニューも話題に。✨ポイント:子どもから大人まで楽しめる“非日常空間”の演出が鍵。■ 町家の抹茶サロン&着物レンタル京都などで人気の町家型のサロン。抹茶や和菓子を楽しみながら、着物をレンタルしてその場で撮影。そのまま街歩きに出かけられる導線設計が魅力です。✨ポイント:店舗内で写真が撮れる“フォトスポット”を設計に取り入れる。成功のカギは「本物」と「遊び心」のバランス日本らしい体験を提供するには、伝統文化を大切にしつつ、時代に合った楽しさを加えるバランス感覚が求められます。形式だけにこだわらず、海外の視点で「面白い」と思える工夫ガイドや解説を多言語対応にして、理解しやすい演出ストーリー性や参加型の工夫で、思い出に残る体験をただ単に和風にするだけでは、リピーターにはなりません。*“また行きたいと思わせる演出と、他にない体験”*が重要です。まとめ:インバウンドを惹きつける“体験”が新時代の鍵「日本らしさ」は店舗の外観だけでは表現しきれません。“文化”を“体験”として提供する工夫が、今後の店舗運営における差別化ポイントになります。和モダンな内装や、忍者・アニメなどのエンタメ要素を上手に融合させながら、外国人にとって“ちょっと特別で、ちょっと学びになる”空間を作ること。それが、SNSで拡散され、話題となり、集客につながる――。「日本らしい体験」を形にすることが、次の時代の店舗づくりにおいて、最も価値のある投資かもしれません。